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野生動物との住み分け

山本よしかずからのメッセージ

 師走になり、ようやく冬眠に入ったのか、最近は耳にしなくなりましたが、一時期、クマが住宅地に出没する騒動が相次ぎました。襲われてけがをするなどの人間の被害も増え、10月末までに18道府県で170人を超えて過去最悪になったということです。


 クマの出没が相次いだのは、山のエサ不足のせいだということです。クマの好物のブナの実が大凶作。イノシシとのドングリの奪い合いもあって腹を空かせたクマがカキなどのエサを求め、山から人の生活圏に下りてきました。冬眠に入るのには、たっぷりと食べて脂肪を蓄えなければならないのですが、エサ不足で冬眠できず、冬になっても人の生活圏でウロウロするクマが多かったそうです。


 ところで、千葉県は本州で唯一、クマがいない県だということをご存知でしょうか。「クマが生息する秩父などの山と千葉県の山の間には関東平野があり、クマが来られなかった」「昔、房総半島と隣県の間には海が入り込み、クマが渡れなかった」など諸説ありますが、ともかく、クマに気を遣わずに山歩きを楽しむことができるのは何よりです。


 これに代わって、本県で被害が問題になっている野生動物がイノシシです。里山では稲やイモ類、落花生などの農作物を荒らし、農家を困らせています。イノシシは房総半島に大昔から生息していましたが、1970年代の中ごろには絶滅した可能性が高いと言われていました。それが1980年ごろから生息数が急増しました。狩猟用の動物として他県から持ち込んで解き放したとも言われています。それが本当なら、釣りのためにバスを各地の湖沼に放したのと同様の、決して誉められない行為になります。


 最近では、キョンの急激な繁殖への対策が課題になっています。キョンは中国南東部や台湾に自然分布しているシカ科の動物で、勝浦市の滑川アイランドで飼われていましたが、逃げ出した個体が野山で繁殖しました。森や林の生態系を崩す外来生物として、県が防除に努めていますが、それにもかかわらずに生息地域を広げ、今では南房総全域に生息し、野菜や稲、イモ、果樹などが被害を被っています。


 軽井沢ではクマのエサとなる生ゴミを徹底して管理し、人の生活圏に降りてきたクマを山に追い払うなどしてクマの生息地と人間の生活圏の境界線を守っているそうです。クマはさておき、野生動物と人間とのトラブルを回避するためには、野生動物の適正な生息数管理など、双方の住み分けを守る工夫と努力が必要です。


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